家づくりお役立ち情報

木の住まいコラム

HOUSE BUILDING
INFORMATION

0円で設置できる太陽光!ありか、なしか?

2021年には「太陽光発電の設置が義務化になるか⁉」と一時期話題になりましたね。
結局義務化にはなりませんでしたが、「2030年までに新築住宅の6割に太陽光設置」という政府目標が掲げられました。

「太陽光は設置したい。でも設置費用が高くて踏み出せない・・・」という方もいらっしゃることでしょう。数年前までは太陽光設置に関する補助金も多く、設置費用の負担軽減ができましたが、最近では太陽光設置に関する補助金もかなり下火になってきました。

そんな中、よく耳にするようになってきたのが「初期費用0円で設置できる太陽光」というものです。これだけ聞くととても魅力的で飛びつきそうになりますが、ちょっと待ってください。
「初期費用0円で設置できる太陽光」の仕組みは大きく分けて、「屋根貸し」「PPA」「リース」の3つあります。それぞれ内容が違うので、よく見極めてから導入しないと、「思ってたのと違う・・・」となりかねません。
ではこの3つの違いは何なのか、これから解説していきます。

 

<屋根貸し>

まずは「屋根貸し」です。自宅の屋根を太陽光発電の設置業者に貸し出し太陽光を設置、屋根を貸した分の賃料が設置業者から支払われる仕組みです。発電した電気は業者のものであり、住宅所有者は発電した電気を自家消費できず、売電収入も得られません。

 

業者はなるべく長く発電させて利益を得ようとするため、契約期間が20年以上の長いものが多いのが特徴です。
屋根の賃料は年間100~200円/㎡程度。10kWの太陽光を載せた場合で、約1万円程度と、大きな収益にはなりません。
得られるメリットは基本的に賃料のため、賃貸住宅のオーナーが賃貸物件の屋根を貸し出す場合などにはメリットがありますが、小規模な太陽光の設置となる住宅ではあまりメリットが得られません。

 

〇メリット
・設置費用、メンテナンス費用がかからない
・屋根の賃料が得られる
・停電時に発電した電気を使用できる

〇デメリット
・契約期間が長い
・契約満了まで自由に屋根を使えない
・契約満了後に太陽光が住宅所有者のものにならない

 

<PPA>

次に「PPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)」です。「ソーラーPPA」や「第三者所有モデル」と呼ばれることもあります。PPA業者が自宅の屋根に太陽光を設置します。発電した電気は業者のものであり、住宅所有者は発電した電気を自家消費できますが、使用した分の電気代をPPA業者に支払わなければなりません。もちろん売電収入は得られません。

 

PPAモデルはアメリカで確立され、住宅用太陽光発電の普及に貢献しました。約7割がPPAモデルを使って導入されたと言われています。
自家消費分の電気料金は通常の買電単価より割安なことが多く、安く電気を使えることがメリットです。また契約満了後は太陽光発電設備が無償譲渡されます。
PPA業者は売電で利益を得るため、契約期間は10年以上と長期間になります。

 

〇メリット
・設置費用、メンテナンス費用がかからない
・契約期間中、自家消費分の電気を割安で使うことができる
・契約期間満了後は太陽光が無償譲渡される
・停電時に発電した電気を使用できる

〇デメリット
・契約内容によっては満了に10年以上かかる場合がある

 

<リース>

最後に「リース」です。リース業者が自宅の屋根に太陽光を設置します。発電した電気は住宅所有者のものであり、自由に自家消費でき、売電収入も得ることができます。その代わりリース業者にリース料金を支払う必要があります。従来の車のリース等と同様の仕組みです。

発電した電気が全て住宅所有者のものという点が他の2つと大きく違う特徴です。新築時、住宅ローンの金額を増やせないなどの理由で太陽光設置をあきらめる場合には、1つの選択肢となるでしょう。
契約期間は10年程度です。リース料金によっては、自家消費+売電のメリットを大きく超えてしまう場合があるので、注意が必要です。

 

〇メリット
・設置費用、メンテナンス費用がかからない
・契約期間中でも自家消費分・売電が可能
・契約期間満了後は太陽光が無償譲渡される
・停電時に発電した電気を使用できる

〇デメリット
・契約内容によってはリース料金が発電メリットを超える

 

「屋根貸し」「PPA」「リース」は、多くの業者が様々な商品として出しています。どの商品にも利用条件があり、条件に該当しない場合は太陽光の設置ができません。
(居住地や屋根の方位、年齢制限、築年数制限、蓄電池の設置の有無など)
また設置する太陽光のメーカーや、電力会社の指定がある場合があるので、気になる商品はまず条件を確認してみるようにしましょう。

 

ではこの3つ、どのように選ぶと良いでしょうか。

絶対に外せないのは、「発電した電気を自家消費できる」ことです。
電気代が値上がりし続けている現在の状況では、電力会社から買う電力を減らすことが重要です。買う電力を減らすことで、電気代に含まれる再エネ賦課金も減らすことができます。

 

また「PPA」と「リース」の場合に活用可能な補助金があります。
環境省の「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」というものです。補助金を受け取るのはPPA業者やリース業者ですが、補助金の一部をサービス料金の低減等により契約者に還元することになっています。
太陽光1kWあたり4万円、蓄電池とセットで導入する場合は1kWあたり7万円の補助があり、PPAの場合はその5分の4以上が、リースの場合はその全額がサービス料金に還元されるため、お得に導入が可能となっています。
残念ながら今年度は予算満了につき公募終了していますが、令和6年度までの継続事業であるため、来年はまた活用のチャンスがあります。
補助金の活用も視野に入れて、検討してみることをお勧めします。

 

最後にひとつ言っておきたいのは、どの仕組みを選んでも、有償設置の発電メリットには敵わないということです。初期費用を払えるだけ自己資金や住宅ローンに余裕があるなら、まずは有償設置を検討しましょう。
様々な物価が上がり、電気代も上がり続け、不安なことが多い時代ですが、この機会に太陽光発電設備を導入して、電気代くらいは不安に思わない暮らしを手に入れてみませんか。

 

[関連記事]

▷太陽光発電は、蓄電システムとの併用がお得  2018年版