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木の住まいコラム

「その間取り、地震に弱いかも?」危険な間取りと安心設計のコツ

地震の多い日本では、「家族の命と暮らしを守る家」であることが何よりも大切です。
そこでまず知っておいて欲しいのが「地震に強い家の条件」。耐震性能は構法だけでなく間取りによっても大きく左右されます。
今回はこれから家づくりを考える皆さまに向けて、耐震性の高い住宅を実現するためのポイントを、できるだけわかりやすくまとめました。
プラン段階から「耐震性」を意識することで、安心度が大きく変わります。ぜひ最後までお付き合いください。

<1>地震に強い家の条件とは?

まずは耐震性の高い家に共通するポイントをご紹介します。

■耐力壁が必要な量・バランスよく配置されていること

耐力壁とは、地震の揺れに耐えるために設ける壁のことです。地震の揺れはどの方向からやってくるか分からないため、家全体に偏りなく配置することがポイントです。配置が偏ると、家がねじれて損傷しやすくなります。
また耐力壁の量が足りないと、家全体の耐震性が低下し倒壊しやすくなります。

■1階と2階の柱・耐力壁の位置が揃っていること

1階と2階の柱・耐力壁の位置が揃っていることを「直下率が高い」といいます。直下率が高い家は、建物の重さをまっすぐ基礎へ流すことができ、地震時には耐力壁が効率的に機能します。「力が素直に流れる安定した構造」なので地震に強い家にできます。反対に直下率が低いと、力が偏り一部に集中してしまうため、弱点が生まれ地震に弱くなります。

■平面的にも立体的にも「左右対称に近い形」であること

家には、重心(建物の重さの中心)と剛心(建物の硬さの中心)があります。重心と剛心が離れていると、地震時に家がねじれやすくなり、倒壊リスクを高めます。そのため構造設計では、耐力壁の強さや配置バランスを調整し、重心と剛心を近づけるようにします。左右対称に近い家は重心と剛心が自然と揃いやすく、地震に強い家をつくる上で大変合理的です。

重心と剛心

■大きな吹き抜けやスキップフロアがないこと

家は壁や床、屋根を箱のように一体化することで強さを保ちます。そのため吹抜けやスキップフロアのように、床が途切れた状態では、建物が一体の箱として働かなくなり、地震力を建物全体に分散できなくなってしまいます。

■2階や屋上を重くしないこと

建物は、重心(建物の重さの中心)が低いほど安定し、高いほど不安定になり揺れやすくなります。また上階が重いと、1階に負担が集中しつぶれやすくなります。

これら5つのポイントを抑えることが、地震に強い家づくりへの近道です。

 

<2>注意が必要な「危険な間取り」の事例と回避策

ここからは、実際に耐震性を低下させる間取りを例に、その危険性と理由をわかりやすく解説します。

(1)南側全面が大きな窓になっている

南面の大開口

■危険な理由
・大開口部分の耐力壁が不足し、他の箇所とのバランスが悪くなる

■回避策
・窓の大きさを適度に調整し、大開口の両端に強い耐力壁を配置する
・2階の柱位置を1階に合わせる(直下率の確保)
・大開口上部の梁を強化する(梁幅・梁成のアップ)

(2)大きな吹き抜けがあるLDK

大きな吹抜けのあるリビング

■危険な理由
・吹き抜け部分は耐力壁をつくれず、耐力壁の量が不足しやすい
・建物の片側に寄せた吹抜けをつくると、建物の一部だけが弱くなり、地震時にねじれが発生しやすい

■回避策
・吹き抜けの大きさを適度に抑える
・吹抜けの代わりに高天井や勾配天井で開放感を確保
・吹抜け周囲に強い耐力壁を配置する
・吹抜け周囲の梁を強化する(梁幅・梁成のアップ)
・火打ち梁や水平ブレースを追加する

(3)二階が大きく張り出したオーバーハング構造

2階オーバーハングプラン

■危険な理由
・1階と2階の柱位置が揃わないため、直下率が低下する
・建物の形状、重さの分布が不均衡になり、重心と剛心のバランスが悪くなる
・床の端が宙に浮いたような状態になり、建物一体で揺れに耐える力が弱くなる

■回避策
・2階を張り出させる場合は最小限にとどめる
・張り出し部分の下に柱や耐力壁を設けて、力の流れを確保する

(4)L字型やコの字型の複雑な形状の家

コの字型プラン 中庭プラン

■危険な理由
・左右非対称な形状であり耐力壁の配置バランスが悪くなることから、重心と剛心が大きくズレやすい
・力が集中し大きな負荷がかかりやすい“角”が多くなるため、地震力が分散されにくい
・床が欠けた形状になるため、地震力が分散されにくい

■回避策
・できるだけ「四角形」に近い形にまとめる
・直下率を高め、できる限り左右対称の耐力壁配置とする
・“角”に強い耐力壁を配置する、“角”に開口部を設けない
・“角”の柱と梁の接合部に高耐力の金物を採用する
・吹抜けは避け、床を強くする(剛床工法、火打ち梁、水平ブレース)

(5)1階がほぼビルトインガレージの家

ビルトインガレージ

■危険な理由
・1階の柱や耐力壁が極端に不足するため、1階に変形が集中しやすい
・車庫開口が大きいため壁配置のバランスが悪くなり、ねじれが発生しやすくなる
・1階に比べて上階が重くなり、1階がつぶれやすくなる

■回避策
・車庫開口のサイズを調整し、耐力壁や柱を増やす
・ガレージの左右、後方に強い耐力壁を確保
・大開口でも耐震性を確保する「門型フレーム」を採用する
・2階柱や耐力壁の位置をガレージの左右の構造ラインに揃えて直下率を確保する

今回紹介した間取りはよくある事例であるため、特別に危険な間取りだとは感じないと思います。
それは構造設計をしているプロが様々な工夫を重ねて、安全な家として成り立たせているためです。
ですが昨今、大規模地震の頻度が上がっていることから、さらなる安全が求められる時代になっています。

<3>最後は構造計算で確認する

耐力壁の配置バランスを整えたり、上下階の直下率を合わせたりと、間取りの段階でできる耐震対策はたくさんあります。しかし、より確実に「この家は本当に大丈夫」と胸を張れる住まいをつくるなら、構造計算(許容応力度計算)を行うことをお勧めします。
構造計算とは、建物にかかる地震力・風圧力・積雪荷重などを数値化し、柱・梁・基礎が安全にその力を受け止められるかを検証する工程です。木造2階建て住宅では義務化されていないため、まだ実施していない住宅会社も多いです。
構造計算を行うと、間取りの弱点を事前に発見したり、耐力壁の必要量を正確に把握できたりと、設計段階での効率的な改善が可能になります。
また「吹き抜けをどうしても取り入れたい」「大きな開口を使いたい」など、デザイン上の希望がある場合も、構造的な安全を確保しながらプランを成立させることができ、間取りの自由度が高くなります。
家は一度建てたら何十年と家族を支える存在です。構造計算は、将来の安心を買うための大切な投資だと考えていただければと思います。

 

「この間取り、いい感じ!」と思っても、構造面から見ると実は弱点だらけ…というケースは少なくありません。
しかしご安心ください。今回ご紹介したポイントを押さえることで、地震に強く安心な住まいにぐっと近づきますよ。

 

<4>住宅の耐震性について詳しく知りたいなら、ウッドリンク・ラボに見に行こう!

今回のコラムでは、地震時の弱点となる構造やその理由をご紹介しましたが、力の流れや建物の壊れ方はイメージしにくいものです。そんな分かりづらい「耐震のあれこれ」を詳しく学べる施設があります。
それがウッドリンク・ラボです。ウッドリンク・ラボでは、壁の配置バランスによる地震時の揺れ方の違いを、模型を揺らして実際にご確認いただけます。また地震時の損傷状況や倒壊過程を再現したシミュレーション動画で、木造住宅の耐震性能を視覚的に確認・比較することもできます。
「理想の間取り×地震に強い家」を叶えるヒントを見つけたい方は、是非ウッドリンク・ラボへお越しください。
構造設計のプロが、地震に強い住宅について基礎からご案内いたします。

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