家を建てるとき、「省エネってどこまでこだわればいいの?」と迷う方は多いのではないでしょうか。
近い将来、政府は新築住宅にZEH水準の省エネ性能を義務化し、さらに2027年には「GX ZEH」という新基準がスタートします。これは「断熱等級6」や「消費エネルギー35%以上削減」、「太陽光+蓄電池+HEMS」などを求められる、これまで以上に高い基準です。
では、今から家を建てる人は、どれくらいの断熱や設備を取り入れれば、10年後も、30年後も快適で満足できる家になるのでしょうか?
今回は、これから住宅はどう変わるかを分かりやすく整理し、家づくり検討者に向けたおすすめの性能基準を提案します。安心して暮らせる家づくりのヒントを、ぜひ見つけてください。
<1>GX時代の家づくりの始まり
日本の省エネ住宅を取り巻く環境は大きな転換点を迎えています。
省エネ基準義務化が2025年4月に開始になり、5年後の2030年には義務化の基準が引上げられる予定です。
12月には性能表示制度の一次エネルギー消費量の上位等級である等級7・8が創設されました。
ここ数年で求められる性能は各段に上がっています。各制度における一次エネルギー消費量基準を下図にまとめます。
(外皮断熱性能については過去記事でまとめています)

その中でも今回注目するのがZEHの新基準です。
今では広く知られるようになったZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は「使うエネルギーと創るエネルギーをプラスマイナスゼロにする家」です。
これに対して2025年9月に発表された、ZEHの新定義であるGX ZEH(グリーントランスフォーメーション・ZEH)は、断熱・省エネ・創エネに加え、蓄電池やHEMSによるエネルギー管理、災害時のレジリエンス、EVとの連携まで視野に入れた「エネルギー自立型住宅」です。単なる光熱費ゼロではなく、家がエネルギーを賢く使い、社会全体の脱炭素に貢献するという新しい価値観が加わりました。
<2>GX ZEHの基準とは?
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、石油や石炭などの化石エネルギーに頼る社会から、太陽光や風力といった地球に優しい自然エネルギー中心の社会への変革を目指す取り組みです。
GXZEHの具体的基準を、従来のZEHと比較して見てみましょう。

GX ZEHでは断熱等性能等級6、一次エネルギー消費量等級8が基本となっており、従来のZEHに比べて、外皮断熱性能・省エネルギー性能ともに高い性能が求められます。
また太陽光発電設備等の創エネを含めた削減率によって、「GX ZEH+」「GX ZEH」「Nearly GX ZEH」のいずれかに分類されます。加えて蓄電池とHEMSが必須設備となっています。
太陽光でエネルギーを創り、蓄電池でエネルギーの自家消費を拡大、HEMSで発電や貯めた電気を賢く使うことでエネルギーの自給率向上を実現させる住宅が「GX ZEH」です。
また必須ではありませんが、設置が推奨される設備としてEV充電設備やV2Hが挙げられています。
EVを所有しているご家庭であればもちろん設置すると思いますが、GX ZEHでは新築時点でEVを所有していないご家庭にも設置の検討を推奨しています。これは充電器の設置スペースの確保や配線ルートなどあらかじめ検討しておくことで、将来的なEV保有を妨げる要因とならないようにするための措置です。
また太陽光発電設備の設置が難しい狭小地や多雪地域では、太陽光発電設備を設置しない「GX ZEH Oriented」とすることも可能です。その場合は蓄電池の設置も必須ではなくなります。
GX ZEHは2027年からのスタートとなっていますが、これから家を建てるなら、このGX ZEHを見据えた設計が目指すべき指標となってきます。
<3>GX ZEH住宅がもたらす暮らしの変化
ではGX ZEH対応の家に住むと、どんなメリットがあるのでしょう?
①快適性と健康性の向上
高断熱・高気密により冬暖かく夏涼しい室内環境は、快適で家族の健康にプラスに働きます。
②光熱費の大幅削減
高断熱+高効率設備+太陽光発電+蓄電池+HEMSを組み合わせた効率的なエネルギー管理で、年間の光熱費が大幅に減少します。将来にわたる電気代の高騰リスクも低減させるため、初期投資は高めでも長期的なトータルコストは低くなります。
③災害時のレジリエンス強化
太陽光発電+蓄電池の組合せで、停電時でも照明や冷蔵庫、スマホの充電など最低限の電力が確保可能です。
電力復旧までの間いつもと変わらない暮らしができ、特にお年寄りや小さなお子さんがいる家庭では安心です。
④資産価値の向上
GX ZEHは省エネ性能が高い新基準に対応しているため、市場価値が下がりにくく、将来的な売却時も評価が高くなります。
<4>補助金でお得にGX ZEHを建てよう
GX ZEHは「みらいエコ住宅2026事業」の性能基準を満たしているため、補助金の活用が可能です。
補助額は110万円/戸(1~4地域で125万円/戸)となっており、長期優良住宅の75万円/戸(1~4地域で80万円/戸)、ZEH水準住宅の35万円/戸(1~4地域で40万円/戸)と比べて高額です。
2025年度も同様の補助金がありましたが早々に予算が消化されてしまいました。
2026年度は昨年度の500億円の1.5倍である、750億円(約6万戸分)の予算となっていますが、補助金活用をお考えの場合は早めの申請をお勧めします。
補助金の要件など詳しい内容はこちらの記事をご確認ください。
<5>新築時に検討しておくと良いこと
GX ZEHは長期的にみてお得とはいえ、初期投資はかなりの金額になってしまいます。
新築時ではなく将来的に蓄電池やEV充電設備の設置を考えている場合は、あらかじめ以下の点を検討しておきましょう。
〇電気設備関連
・主幹ブレーカー容量に余裕を持たせる(60Aなど)
・分電盤に専用回路(蓄電池用・V2H用)の空きスペースを確保
・蓄電池、V2HはHEMSやスマートフォンで管理するため、LAN配線やWi-Fi環境を整備
主幹ブレーカーや分電盤の取り替えには、数万~十数万かかることが多いです。
新築時に対応可能な計画をしておくと、導入費用を抑えることができます。
また分電盤はHEMS対応としておくと、後付けの追加機器が必要なく便利です。
〇配管の準備
・蓄電池設置予定場所、駐車スペースから分電盤まで、PF管やCD管を通して配線ルートを確保
〇設置スペースの確保
・機器設置場所への直射日光、積雪対策(屋根等)
・周辺スペースの確保
・分電盤の近くに計画
機器によって離隔距離、メンテナンスのための前面スペースが必要になります。
設置予定場所には余裕を持たせたスペースを確保しておきましょう。
また蓄電池やV2Hと分電盤の距離は近いほうが、電力のロスを小さくできます。遠いと配線工事も追加料金がかかる場合があるため、なるべく近くに計画しましょう。
GX ZEHは、今だけでなく10年後、30年後も価値ある家にするための選択です。
省エネ基準は年々厳しくなり、将来的には「非対応住宅は売却時に不利」という時代が来るかもしれません。
今建てるなら、未来の基準を先取りした家づくりをしておくことが、家族の安心と資産価値を守るカギになります。
<6>GX ZEHのことをもっと詳しく知りたいなら、ウッドリンク・ラボに見に行こう!
GX ZEHは、「家計にやさしい」「災害に強い」「環境にやさしい」「資産価値が高い」を兼ね備えた「未来型の家」です。「興味はあるけど、何から始めればいい?」という方は、まずウッドリンク・ラボへお越しください。
ウッドリンク・ラボでは、断熱や省エネの基本から詳しい内容まで、実物を見たり、模型に触れたりしながら楽しく学ぶことができます。またGX ZEH基準の室内環境の体感も可能です。
GX ZEHや使える補助金についてさらに詳しく知りたいという方は、是非ウッドリンク・ラボへお越しください。
家づくりのプロがあなたの疑問にお答えします。