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断熱性能の高い家づくり【Part.6】

断熱性能の高い家づくりの第6回目は、「断熱材」について解説します。

 

家づくりに欠かせない縁の下の力持ち、それが断熱材です。

天井や壁の中など隠れた場所にあるため、現物を見たことがないという人が多いかもしれませんね。

 

家を丸ごと包み込む断熱材は、「熱」という漢字が入っていることから、冬場に暖かい温度を保つ印象が強いと思います。

冬に効果を発揮するのはもちろんですが、夏の快適さも断熱性能が高いかどうかで差が出ます。

 

第1回「なぜ断熱性能の高い家がいいのか」で解説しましたが、近年は夏場に35度を超える日が多くなりました。

健康を維持するためには、エアコンのある生活が不可欠。

性能の高い断熱材を使うことで、快適な室温が保たれ、エアコンの負荷も少なくできるのです。

 

 

〈断熱材の種類と特徴〉

 

断熱材とひとくちに言っても、種類がたくさんあります。

素材の特徴によって、「繊維系」「発泡プラスチック系」にわけられ、それぞれにメリット・デメリットがあります。

ここで、代表的な断熱材をご紹介します。

 

 

【繊維系】

 

■グラスウール

断熱材の中で最も安価なため、多くの住宅で使用されています。

原料はガラスです。

・メリット

最も安価

耐火性能が高い

ほかの断熱材に比べて非常に軽い

吸音性能が高い

・デメリット

湿気に弱いため防湿措置が必須

自重によって脱落しやすく隙間ができやすい

・熱伝導率(断熱性能)

0.036~0.050

 

■ロックウール

鉱物を繊維状にしたものです。

グラスウールと形状、施工性が似ています。

・メリット

リサイクルが可能

耐火性能が高い

シロアリの被害を受けにくい

・デメリット

グラスウールに比べて少し高価

自重によって脱落しやすく隙間ができやすい

・熱伝導率(断熱性能)

0.038

 

■セルロースファイバー

新聞古紙を原料としています。

・メリット

調湿性能が高く、壁内結露しにくい

専門業者による工事のため、施工精度の差が少ない

防虫作用がある

・デメリット

コストが高い

ほかの断熱材に比べて重い

・熱伝導率(断熱性能)

0.040

 

【発泡プラスチック系】

 

■吹付硬質ウレタンフォーム

2種類の成分を混合し、発泡させることで作られています。

・メリット

吹き付けて発泡させると、高い気密性が得られる

強度が高く、衝撃に強い

・デメリット

日光や水に長時間さらされると、劣化速度が速まる

施工性にむらがでやすい

・熱伝導率(断熱性能)

0.026~0.040

 

■ポリスチレンフォーム

ポリスチレン樹脂を原料としています。

・メリット

防湿性が高い

切断しやすく、施工性が高い

・デメリット

発泡プラスチック系の中では、熱に弱い

強度が低く、衝撃に弱い

・熱伝導率(断熱性能)

0.022~0.036

 

■フェノールフォーム

フェノール樹脂を原料としています。

・メリット

劣化速度が遅い

燃えにくい

断熱性能が非常に高い

・デメリット

上記の断熱材より高価

衝撃に弱い

・熱伝導率(断熱性能)

0.018~0.020

 

〈断熱性能は、熱伝導率と熱抵抗値で測る〉

 

断熱材の性能を比べるには、熱伝導率【W/(m・k)】を目安にします。

熱の伝わりやすさを表す単位で、値が小さいほど断熱性能が高いことを示します。

 

今回ご紹介した断熱材を、熱伝導率をもとに比べてみましょう。

性能の違いが、ひと目で判断できますよ。

<性能比較表>

 

 

 

ただし、「熱伝導率の値が小さいものを選べばいい」というわけではありません。

断熱性能には、断熱材の厚さも大きく影響します。

 

同じ熱伝導率の断熱材を採用しても、厚さが「50㎜」と「100㎜」とでは、大きく断熱性能が変わります。

 

ここで出てくるのが、「熱抵抗値」です。

文字通り熱の伝わりにくさを表す数値で、大きいほど熱を伝えにくいです。

 

「熱を伝えにくいほど、室内の温度は外へ出ていかない」ので、熱抵抗値の数値が大きいほど断熱性能が高い仕様になりますね。

 

わかりやすく、計算式で表してみましょう。

 

・熱伝導率0.024の断熱材を50㎜施工した場合

計算式 → 0.05m÷0.024W/m・K=2.0833

 

・熱伝導率0.024の断熱材を100㎜施工した場合

計算式 → 0.10m÷0.024W/m・K=4.166

 

熱伝導率が同じ場合、厚みを2倍にすれば熱の伝えにくさを表す熱抵抗値も2倍になり、より熱を伝えにくくなるのです。

 

 

〈断熱材の工法は、2種類ある〉

 

では、断熱材を「どこに入れるか」というと、住宅では2種類の工法が行われています。

 

壁の中の空間に詰める「充填(じゅうてん)断熱工法」と、外壁柱などの外側に断熱材を張る「外張り断熱工法」の2つです。

 

このように断熱材や工法には種類がありますが、「この断熱材だから・・・この工法だから大丈夫・・・」と絶対的なものはありません。

いずれもきちんと施工されなければ、断熱材の性能を100%発揮することができないのです。

大事なポイントは断熱材がすきまなく施工されているかどうか。壁の中には筋違、構造金物、コンセントBOXなど断熱材以外の部材も施工しなくてはいけません。その際に断熱材を押しつぶして施工したり、断熱材を欠きとったりすることによって断熱材本来の性能が発揮できなくなってしまいます。

断熱材にすきまがあいてしまったら、その部分の温度が低下し壁の中で結露してしまう可能性も。

一方プレウォール工法では、性能が高いことによって断熱材の厚さを薄くすることができます。その結果コンセントBOXなどが断熱材を痛めることなく施工することができ、断熱材をすきまなく施工することができます。プレウォール工法の説明はこちら

 

建築会社で断熱工事の材料、工法がどのように選択されているか。

また、現場ではどう施工されているのか。

できる限り、自分の目で確かめることをお勧めします。

 

〈きちんと勉強して、住宅会社へ相談を〉

 

注文住宅なら「どんな断熱材でも、自由に選択できる」と思うかもしれません。

でも実際は、断熱性能に力を入れている会社でも2、3種類の断熱材を取り扱っている程度。

中には断熱材の仕様を、一律で決めている会社もあります。

 

どうしても採用したい断熱材があれば、住宅会社選びの際にきちんと確認しましょう。

 

さて次回は最終回、「これからの時代に求められる住宅とは」をお届けします。

現代の社会や環境で、どのレベルの住宅を目指していけばいいのかを解説します。

お楽しみに!

 

断熱性能の高い家づくりコラム

 ▷【Part.1】~なぜ断熱性能の高い家がいいのか~

 ▷【Part.2】~断熱性能が高いと健康に過ごせる!~

 ▷【Part.3】~断熱性能はUA値で判断しよう~

 ▷【Part.4】~気密性は欠かせない~

 ▷【Part.5】~断熱性能を上げるポイント①窓~

 ▷【Part.7】~これからの時代に求められる住宅とは~